フューチャーセッション報告
しずおか消費者教育未来会議
フューチャーセッション vol.2
「“消費者教育が劇的に広まった未来”は?」
日時:2016年12月2日(金)18:30~20:30
会場:パルシェ第1・2会議室(静岡市葵区黒金町49番地)


2回目の開催となる「しずおか消費者教育未来会議」。今回の参加者は16名。
冒頭、メインファシリテーターを務める天野浩史氏(静大フューチャーセンター初代ディレクター)から、会議の目的や、今回のゴールイメージ、フューチャーセッションについての説明がありました。その後、チームごとに自己紹介を行い、併せて第1回の内容を初参加者に紹介しました。
第1回の概要
最初のプログラムでは、最近購入したものを付箋に書き出し、模造紙にグルーピングしながら貼り出していく。どのようにグルーピングするかについて指定はなかったが、食べ物に関する項目が多く、各チーム、お菓子、飲み物、食材、身につけるもの、文房具といった形で分類。(天野氏から「他にも、国産、外国産といった形でグルーピングもできたのでは」という提案があった。)
2つめのプログラムでは、「『買う』ときに何を考えているのだろうか?」をテーマにセッションを実施。「普段は買い物の中で国産かどうかを基準に選んだりするが、居酒屋では無頓着になる」など、時と場合によって消費判断の基準が変わるという意見も出てきた。そして、「自分が一番大事。自分の基準で判断する。」という意見が多かった。
消費者教育支援センターの柿野成美氏からの話題提供にあった、2013年に起きたバングラデシュの首都ダッカ ビル崩落事故について触れ、ファストファッションが作られる背景を知ったことを振り返る。
天野氏は、次のように第1回の内容をまとめました。「私たちが『買う』という選択を行うとき、何を基準に選ぶかで誰かの状況を変えることができるかもしれない。そのためには、正しい知識を知っておく必要がある。今まで、私たちは、知らないことが多く、そして自分優先で買っているということに改めて気づいた。」

そして、今回のセッションの内容へとつなげていきます。「私たちには、知らないことが多い。では、どうしたら消費者教育の中身をみんなに知ってもらえるでしょうか。そして、みんなが知っているとは、どういう状態になるでしょうか。どんな「仕掛け」を用意すれば、消費者教育が広まった社会にすることができるでしょうか。」
第2回のセッションは、消費者教育が広まるとどういう社会になるか、また、広める仕掛けについて検討していきます。



消費者教育が広まった未来はどんなことが起きるだろう?
最初のプログラムでは、「消費者教育が広まった未来」について検討します。隣同士で話し合い、その内容をベースにチームでも話し合います。


「消費者教育が広まった未来」
Aチーム
- 今の企業は、安さと効率を求め、限界を追求している。消費者教育が広まると、「消費者」「企業」「生産者・労働者」みんなが寄り添った社会になる。便利を求めすぎると、しわ寄せが来る。「お互いのバランスがちょうどいいところ」で落ち着けば、買う側も作る側も、どちらもハッピーになれる。買う人も、時には作る側に。相手の目線で考えられるようになる。
- コンビニは、24時間営業でなくてもいい。通販も、注文してから1時間以内に配送されなくてもいい。→今より多少不便になっても、それが「当たり前」になれば、それが基準になっていく。(今の子どもたちもそれが基準になるはず。)
- フェアトレード商品は、今は少ないが、もっと増えて、商品の選択肢が増えるといい。
- エアコンではなく、窓で換気を行い、適切な温度にできる。そういう知識が広まるといい。
- 「手間がかかるのは当たり前」の世の中になれば、人々の価値観や労働に対する考えも変わり、社会も大きく変わる。心や生活に余裕が生まれ、スローライフな世の中へ。今ほど働かなくてもいい世の中になり、みんながハッピーになる。(電車が遅れても大丈夫なくらい、心にゆとりが生まれる。)
Bチーム
- 物価もコストも上がる。
- 作る側と売る側の境目がなくなり、食べ物を買うという意識がなくなる。国産が増える。兼業農家が増え、自給自足が増える。食料を作ってシェアする「フードシェアリング」の考えが広まる。
- 物を作る人のことを考えられるようになる。
- 自分の体(健康)を気遣い、平均寿命が伸びる。
- 義務教育で途上国へ行く。→世界のことを知ることができる。貧しい国がなくなり、世界が平等になる。
- だまされる人が減る。賢い消費者になる。
- 余暇が増える。家電に関しては、最新のものの方がエコ。
- GDPは下がるが、幸福度は上がる。
- 物が減る。ゴミが減る。物への思い入れが強くなる。「もったいない」の意識が増える。
Cチーム
- 経済はどうなる? 働き口がなくなる?
- 途上国の人々の生活水準が上がる。
- 義務教育の中に、消費者教育(教科ではなく、全体の中で)を入れることで、自然に知識を身につける。→子どももフェアトレードについて説明できるようになる。
- フェアトレードの認知度が上がり、確立されていく。→安いものがいいとは限らなくなる。→物を選ぶ基準が高くなる。
- 今は安さを重視して生産しているが、良いものを作ろうという方へ流れる。→価格が高くなるかも? 売れなくなったら心配…。
- 考え方・ライフステージが変化していく。
- 芸能人のSNSにフェアトレードの商品が紹介される。→女子高生が真似をする。→フェアトレード商品が売れる。(若者たちからフェアトレードについて発信していく。)
- チョコレートの生産国がどこなのか、フェアトレードの商品はかわいいなど、さまざまな情報を発信する未来になる。
チームごとに出てきた意見は異なりますが、消費者教育が広まった未来は、「物を選ぶ基準が高くなる」「安さが必ずしもいいというわけではなくなる」「余暇が増え、スローライフの世の中になる」「フェアトレードが広まる」といったキーワードが出てきました。
人々の消費の判断基準が安さや早さではなく、質や中身に変わることで、企業や生産者側も安さや早さよりも、質や中身を考えるようになる。人々は「待つ」ことを厭(いと)わなくなり、生き急いで働かずに、自分で野菜を育ててみるなど、余暇を楽しむようになるかもしれない。企業の考え方、個々人の働き方・生き方の変化につながるのではないかという「未来像」が見えてきました。

買い物で社会を変える仕掛けを考えてみよう
続いて、「買い物で社会を変える仕掛けを考える」ということをテーマにセッションを行いました。「フェアトレード」を例に、「どんな仕掛けを作ればフェアトレードが広がるか」を考えました。
まずは、アイデアの種となる、一人ひとりの関心事をできる限りたくさん書き出します。次に、「マグネットテーブル」と言われる手法でチームを作ります。まず「自分が語ることができるほど興味があること」を個人ごとに書き出した紙を掲げて、会場内を歩き回り、「似たことを書いている人」「一緒になると化学反応を起こせそうな人」「自分が書いたものを捨ててもいいと思えるアイデアの人」を探し出し2~3人のチームを作ります。
チームができたら、それぞれが書いたアイデア(例:YouTube、旅行、スポーツ)を使って、「自分のアイデア」×「フェアトレード」×「他の人のアイデア」を掛け算して、「どんな仕掛けを作ればフェアトレードが広がるか」を考えていきます。



「どんな仕掛けを作ればフェアトレードが広がるか」
アイデア「YouTube × 音楽」
- 動画前の広告で、フェアトレードや児童労働についての情報を流す。
- YouTuberが、フェアトレードの商品を食べる動画を流すことで、フェアトレードの商品を広める。
アイデア「関東の某テーマパーク × 旅行」
- テーマパーク内でフェアトレードの商品を販売。非日常の空間なので、夢の国効果で価格の高いフェアトレード商品でも手を出しやすい。
アイデア「フェス × バンド」
- 「フェアトレードフェス」を開催する。
→発展途上国のバンドや、日本のバンドに出演してもらう。発展途上国で過酷な労働をしている人とのコラボレーションバンドを組む。
→グッズは、「made in Japan」など、生産国をわかりやすくし、発展途上国で作ったものも適正価格で販売する。
→チケットの転売を防止し、適正価格で販売する。
アイデア「田舎 × Art × 日本語」
- 丸子、岡部、川根などの田舎で、留学生に向けたマルシェを開催。
→フェアトレードを題材にした異国料理、Art、雑貨を販売したりするイベント。
→フェアトレードをテーマにしたステージイベントも実施。
アイデア「ラブコメドラマ × テレビ」
- フェアトレードを扱うお店を舞台にした、ラブコメドラマを作る。実際あるお店を舞台にすれば、テレビを観ている人も買いに行くことができる。
アイデア「スポーツ観戦 × 野球」
- 「フェアトレードチーム」を作る。
→チームと提携し、ユニフォームに「フェアトレード」を記す。
→フェアトレードの広告を作り、CMに選手を起用する。
→チケットの一部を募金する。
一人ではなく、二人、三人と集まり、それぞれのアイデアを掛け合わせることで、一人だけでは考えつかないような「仕掛け」が導き出されました。いずれの企画も、企業や個々人が協力することで、もしかしたらすぐにでも実現できるかもしれない仕掛けです。


今回のセッションで、若者それぞれが気づいたこととは?
最後に、今回のセッションを通して印象に残ったことや、気づきをA4用紙に記し、共有しました。
それぞれの「気づき」
学生
- アイデアは無限大
- 遠い話のようで近い話題から!
- 消費者って思っている以上に影響力がある
- 私たちがみんな関係者
- 自分にはまだ知らないことが多い
社会人
- 組み合わせ次第でアイデアは無限大!
- 他人事から自分ごとに近づけた
- 発想の転換。「当たり前」とは?
- できることはたくさんある!
- 何でもいい! 何でもあり!
- 知っていると知らないでは、モノの見方が変わる
- 広がっていった未来にはできることがいっぱい

第1回開催時には、「自分が一番大事」「自分一人が始めたところで」というように、視点が自分中心でした。第2回のセッションでは、社会を変える仕組みを考えることで、視点が、自分中心から、社会経済のこと、世界の人々のことにまで及んでいったように思えます。
消費者である自分たちが社会に及ぼす影響を考え、自分たちの行動が社会を動かすきっかけになる。一人ではなく、周囲の人と一緒にアクションを起こせば何か変わりそうという、未来に向けた、前向きな思考が形成されてきました。
第3回では、「『世界がハッピーになる買い物がつくる未来』に向けて今できること」をテーマに、最終セッションを実施します。自分たちの消費行動を通して、世界をハッピーにできるか。また、新しいアイデアが飛び出してきそうです。