フューチャーセッション報告
しずおか消費者教育未来会議
フューチャーセッション vol.3
「未来編集会議 〜未来イメージの実現までのストーリーを考える〜」
日時:2016年12月20日(火)18:30~21:00
会場:パルシェ第2・3会議室(静岡市葵区黒金町49番地)


3回目の開催となる「しずおか消費者教育未来会議」。今回の参加者は18名。18名中15名は、第1・2回のいずれかに参加しているため、緊張感があった第1・2回より、ずいぶん打ち解けた雰囲気でスタートしました。
最初に、メインファシリテーターを務める天野浩史氏(静大フューチャーセンター初代ディレクター)から、フューチャーセッションについての説明や、第1・2回の簡単な振り返り、第3回となる今回のゴールイメージについて説明がありました。
第1回では、自分たちの「消費」に注目し、消費の向こう側(ファストファッションが作られる裏側の事情)を知りました。「視点が自分中心であり、また、自分たちには知らないことが多い」。それが、第1回の気づきになりました。
第2回では、誰もが消費者教育を知っている社会にできるよう、フェアトレードを例にあげ、自分の興味対象と掛け合わせ、広める仕掛けについて話し合いました。動画サイトを使った取組、ドラマを使った仕掛け、フェスの開催など、若者ならではの自由な発想のアイデアが生まれました。
第3回の実施にあたり、天野氏は、「そもそも消費者教育は、どこを目指しているのだろうか。」と考えたそうです。「フェアトレード、森林認証、寄附付商品、地産地消、消費者トラブル、エコマーク…。こういった消費者教育のキーワードとなる情報を誰もが知っていて、地域・社会との関連性を理解できれば、自立した選択ができる。とても素晴らしいことなのに、なぜ広がらないのか。実現した未来がイメージができないから、広がらないのではないか。」
そこで今回のセッションでは、消費者教育における3つのキーワードをもとに、実現した未来イメージを描いてみることにしました。

消費者教育に関連した3テーマ「フェアトレード」「消費者トラブル」「地産地消」について、未来イメージを考えてみよう
今回は、消費者教育の中でも、よく取り上げられる「フェアトレード」「消費者トラブル」「地産地消」の3つのテーマについて、それぞれ6人ずつ3グループに分かれてセッションを実施しました。
はじめに、欲しい未来、作りたい未来を考え、アイデアを出していきます。次に、その未来の実現に向けて、ストーリーを描き、新聞という形でアウトプットしていきます。
天野氏制作「しずおかフェアトレード新聞」
2026年12月20日発行(想定)

国内シェア堂々1位へ。日本人の2人に1人がエシカルファッション
日本でエシカルファッションのみを扱うファッションブランド「MOCHIDA」が、日本国内でのシェアが1位になったと発表された。これで統計上、日本人の2人に1人は、途上国で製造された「エシカルファッション」を身につけていることになる。
途上国の児童労働もゼロに。全ての子どもたちが学校へ
フェアトレードの普及によって、途上国の状況も変わった。10年前に問題視されていた児童労働も解消。全ての子どもたちが学校へ通えるようになり、大学も新設。経済発展の礎(いしずえ)が築かれた。
きっかけは、一人の女性の起業。そして日本のトレンド変化
きっかけとなったのは、持田氏の起業。10年前に行われた「しずおか消費者教育未来会議」での体験が元になり、単身バングラディッシュへ。現地でのパートナー探し、ジュートカバン製造を皮切りに、日本での販売をスタートさせた。
また、日本でも、若者を中心にトレンド変化が重なった。社会貢献志向が高まり、「高くても社会をよくしたい」という消費行動が顕著となった。
次はアメリカ・中国へ
アメリカや中国でも、販路を広げていく予定。生産者も消費者もWin-Winとなる関係が世界基準となるのも時間の問題だ。
大手ブランドも、あり方を見直し
こういった背景もあり、大手企業も途上国との取引を「途上国の発展」という視点で見直し。バイヤーたちも現地の住人と共に「良いものをつくる」という方針へ切り替えつつある。
グループ1
「フェアトレード商品が当たり前になった未来は?」
まずは、意見出し。
- 危険な添加物がなくなっている。食べ物がおいしくなる。
- 手作りのおしゃれなものが増える。作られた国へ行って、作り手に会いたくなる。
- 児童労働がなくなる。不当なコスト削減が行われなくなる。→安売り店がなくなるかも。
- チョコレートは、フェアトレードのものが当たり前になる。
- 生産者が豊かになり、モチベーション向上に。経済が発展し、教育が行われ、「発展途上国」がなくなる。
↓
物価が上がり、フェアトレードが当たり前になることで、「フェアトレード・ラベル」をわざわざつける必要がなくなる。地産地消が増える。



次に、フェアトレード商品を買っている一人の女性を想定します。
ジュンコ(25歳・OL)
- ナチュラル系メイク、てかてかしていない。髪もさらさら。
- 大量生産ではない服を着ている。
- 街で、人と服がかぶることがない。
- 安さに飛びつかない。
- ゆとりがある。
- 質・生産地によって商品の選択肢を変える。
こんな女性が街に増えれば、一人ひとりに個性が生まれ、日本の日常風景も変わるかもしれません。未来を想像し、アイデアが次々に生まれてきます。
- 生産者は、商品を買う人の顔が見える。
- (さまざまな知識・情報が必要になるため)教育が忙しくなる。→雇用が増加し、失業率減少へ。→治安がよくなり、生活も豊かになる。
- 農薬不使用へ。→環境が改善。→自然が豊かになり観光需要拡大へ。
- (消費者がアクションを起こす→)フェアトレードの需要が増える。→大企業がフェアトレード商品を作るようになる。
- フェアトレード商品をプレゼントとして買う。→自分も嬉しい。周りも嬉しい。→SNSで発信していく。
- 雑誌などのメディアでもフェアトレードを取り上げるようになる。
- フェアトレードを「ビジネス」にしては意味がない。事業者は欲を捨てる。消費者も「安いモノを買いたい」という欲を捨てる。



これらのアイデアを元に、「消費者の需要に応じ、大企業がフェアトレード商品を作るようになった」というストーリーを描きました。
グループ1制作「新聞26面」
2021年10月19日発行(想定)

「フェアトレード チョコレート」がスーパーから消えた事件
12月20日、日本から「フェアトレード チョコレート」がなくなった。
きっかけは、ここ数年の消費トレンドから「フェアトレード チョコレート」が消費者の目に留まり、バカ売れ! 国内のチョコレートメーカーは、原料であるカカオの輸入先の取引価格の見直しを行い、生産者に適切な価格で取引を行う協定に合意した。これにより、国内の市場に出回るチョコレートは、全てがフェアトレードされることになり、「フェアトレード」を表示する必要がなくなった。
これを受け、チョコレートだけでなく、コーヒーやサッカーボールなど、衣食住に関わる多くの商品が、適正価格で取引されるようになることを願う。
この変化に対する感想
消費者:昔は作り手のことを考えていなかったけど、フェアトレードという概念がなくなったことで、選ぶ手間がなくなり、安心できました。
チョコレートメーカー:今まで、正直、搾取することしか考えておらず、自分たちの利益ばかり考えていました。消費者のみなさんの意識が変わってきていることで、我々メーカーも変わらざるを得なくなりました。
グループ2
「消費者トラブルが激減した未来とは?」
まずは、意見出し。話題にあげにくいテーマのため、初めは、現状の洗い出しから始めました。
- 誰しも被害者になりうる。実は、加害者も心を痛めているかも…。(ノルマがある)
- おじいちゃん、おばあちゃんが狙われやすい。(訪問販売、振り込め詐欺)→一人暮らしで話す人がいない。相談する人がいない。判断力の低下。よくわかっていないのに買っちゃう。
- 若者のトラブルも増えている。(スマートフォントラブル、ワンクリック詐欺)



現状の問題から、こんな未来があったら消費者トラブルが激減するのではというアイデアを出していきます。
- いろいろな商品をインターネットで買える。(高齢者もインターネットを使う。)
- 物を買った人同士で相談ができる、消費者同士で作るジャンルごとのコミュニティサイト。
- 買うときの判断軸になる。
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- 地域同士のつながりがもっとあれば…。(友人、ご近所の人、役所の人、お店の人…。)いろいろな人がつながれば、犯罪が減るかもしれない。
- 自治体で講座をやる。→知識が増える。→「詐欺だ! だまされている!」と気づく。
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- 消費者の知識・意識が増える。→売る側も「商品説明をしないと買ってくれない。」と思い、意識が変わる。
- 商品もよくなる! 自然と良いものが残る。
- 内閣総理大臣賞。ノーベル消費生活平和賞が創設される。
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消費者同士で作るコミュニティが、消費者トラブルを激減させ、「ノーベル消費生活平和賞」という新しい権威ある賞を受賞するというストーリーを作りました。
グループ2制作「全国消費者新聞」
2050年11月20日発行(想定)

「静岡コミュニティ」ノーベル消費者生活平和賞受賞
消費者トラブル激減。受賞は全国初
11月18日、「静岡コミュニティ」が「ノーベル消費生活平和賞」を受賞した。「ノーベル消費生活平和賞」は、地域で消費者被害の激減に取り組んだ団体や企業に贈られる賞。今回受賞した「静岡コミュニティ」は、全国初の受賞となった。
代表のみかえるさんは、「二十代の頃から消費者教育に取り組み、消費者教育未来会議で立ち上げたこのコミュニティが、今回、ノーベル賞を受賞し、たいへん嬉しいです。」と答えた。
静岡コミュニティとは?
いろいろな商品がインターネットでつながり、一人暮らしの高齢者が商品について相談し合えるコミュニティサイト。地域と地域を超えて、消費者同士がつながり、商品購入の判断や、セミナー勉強会が盛んに開かれた。コミュニティサイトを立ち上げた みかえる氏は、日常生活の場面ごとにサイトを分類。多くの世代が、消費を通じてつながる社会を実現した。
グループ3
「地産地消が当たり前になった未来とは?」
まずは、「地産地消」について、アイデアを出していきます。
静岡でできるもの
- 温泉
- 海産物
- 木
地産地消になってほしいもの
- 文房具
- 服
- エネルギー
地産地消のメリットは?
- 安心・安全
- 顔が見える。愛着が湧く
- 品質が保証される。長持ちする
- 信頼度アップ
- 外部の影響を受けない
- 地元を発信できる



地産地消のメリットを踏まえ、「地元の特産物を地産地消。地域間で物々交換できるといいね」と話を膨らめていきます。温泉地でもある静岡。温泉という観光資源を使った地産地消ができないかと考え、「温泉を地産地消するための施設『何でも静岡温泉』」の建設を思いつきます。
「何でも静岡温泉」
- どうしたら仕事にできる? いろいろな可能性がある仕事に。
- 内部の強みをアピールしつつ、外からの輸入品(ブツブツ交換)
- 建物が静岡の木。山に行かなくても木に触れられる。→産業人(農業、林業)を創出できる。
- 人を呼び込み、町も作れる。顔が見える仕事に。



「何でも静岡温泉」は、「S産大に通うたまちゃんが、静岡県外産のしらす丼を食べ、危機感を感じた。学生から商店までもを巻き込み、施設を作る」というストーリーを描きました。
グループ3制作「富士山新聞」
2016年12月20日発行(想定)

何でも静岡温泉、ついにオープン!
建物の外観には、静岡産の木材を使用
静岡産の危機…
大学入学後、学食で生しらす丼を食べていました。しかし、そのしらすは、静岡産ではないことを知り、危機感を感じ、数人の仲間と「地産地消サークル」を立ち上げました。構内の直売所では、静岡で採れた農産物を販売しました。
活動は大学の枠を超える
当初は、大学構内で運営していた直売所。SNSでその様子を見た農家も加わり、だんだん店舗数が増えた。それを見た伊豆の商店街の人に請(こ)われ、商店街でも出店。漁業組合も加わり、金目鯛や、桜エビ、生しらすなども販売した。規模が大きくなり、地産地消マルシェから、観光施設へと発展していった。
静岡温泉の見どころ
- 食材はもちろん、食器も静岡産。
- 静岡茶も飲める。
- 静岡みやげ、勢揃い。
おわりに
今回、セッションで描いた未来イメージは、実際に関係者を集めてフューチャーセッションを実施すれば、実現可能になるかもしれません。未来を担う若者たちの今後の活躍に期待したいと思います。
メインファシリテーターを務めた天野氏は、「全3回のセッションを通じて、多くのことを思い、考えたと思います。今回の内容を、友人や家族など、周りの人へ伝え、社会を変えていく一つのステップになれば幸いです。」と話します。
最後に、静岡県くらし・環境部 県民生活局 県民生活課の山﨑敦課長より、「静岡県は、人口減少の問題もあり、新しい産業を生み出し、魅力を増加させる必要があります。若者が、安心・安全に暮らせる静岡県を作っていけたらと思っています。未来新聞が、新しい静岡の未来と重なっていければ幸いです。」と締めくくりました。


それぞれの「気づき」
学生
- “共感”を生み出す当事者は尊い
- 何でも地産地消すればいいわけではない。地域間の連携が大事
- 私にもできることがある
- 思いつき+多様性=素敵なアイデア
- お金が全てではない
- コミュニティは大事!(最大の防犯になる)
- つながりが大事! 消費者はひとりでは生きていけない
- 当たり前の言葉がなくなる(?)まで普及
- 「フェアトレードが当たり前」とは、フェアトレードという言葉がなくなるということ
社会人
- 地産地消は、地元愛につながる
- 地産地消は、品質が保証される
- フェアトレードビジネスのひとり歩きが起きては意味がない
- 地域の横のつながりがもっと増えるといい
- 孤独は怖い! 相談できればトラブルは防げる。つながり、コミュニティがトラブル防止に役立つ
- 物を買うのは一人。買うことで、地域・人と横のつながりができる
- 逆転の発想
- 「当たり前」を意識しなくなった時が、「本当の当たり前」の時なのだろう
- パワープレイで何かできるかも
